高齢者肺炎球菌予防接種

肺炎は、がん、心疾患に続き、日本人の死亡原因の第3位で、年間に10万人以上の方が亡くなり、その多くが高齢者の方です。中でも肺炎球菌によるものが最も多いと言われております。米国ではすでに積極的に肺炎球菌ワクチンの接種をしております。日本では、今まで接種率は低かったのですが、2009年の新型インフルエンザ流行に伴い、肺炎の予防のために肺炎球菌ワクチンが関心を集めるようになってきました。

2014年10月より肺炎球菌ワクチンのPPV23（ニューモバックスNP）の定期接種が開始されました。2024年4月からは65歳の方が公費助成で定期接種できます。また、高崎市では66歳以上の年齢の方がPPV23（ニューモバックスNP）を任意接種として新規で受ける場合、一部公費助成（2,000円）も行われております。詳しくは、かかりつけ医にご相談下さい。

肺炎球菌による肺炎

肺炎による全死亡者数の95％が65歳以上です。原因菌としては、肺炎球菌が約30％を占めており、肺炎の原因としては一番多い細菌です。肺炎球菌は健康な人の鼻やのどなどに常に存在している場合があり、肺炎球菌があるだけで必ず肺炎になるというわけではありません。しかし、高齢者では加齢に伴い抵抗力が衰え、加えて気道の構造が変化するために風邪やインフルエンザにかかった時に容易に肺炎になってしまいます。しかも高齢者の肺炎は、高熱や咳や膿性の痰、呼吸困難など定型的な症状が乏しいため、しばしば早期発見が遅れ重症化しやすくなります。

肺炎の治療としては抗生剤を使うのですが、最近は、抗生剤が効かない耐性菌が増えております。特に肺炎球菌は、半数以上が耐性菌となっており、肺炎が治りにくくなっております。そのため、肺炎球菌ワクチンの接種が、高齢者の肺炎予防に貢献することが期待されている状況です。

肺炎球菌ワクチンの種類と効果

肺炎球菌ワクチンには、23価多糖体ワクチン（PPV23）（ニューモバックスNP）と13価結合型ワクチン（PCV13）（プレベナー13）、そして、2023年から15価結合型ワクチン（PCV15）（バクニュバンス）があります。日本ではどのワクチンも65歳以上の高齢者に接種可能ですが、現在PPV23（ニューモバックスNP）は定期接種、PCV13（プレベナー13）とPCV15（バクニュバンス）は任意接種となっています。
肺炎球菌は95種類以上の血清型がありますが、このPPV23（ニューモバックスNP）ワクチンは、23種類の血清型に効果があります。この23種類の血清型は成人の重症の肺炎球菌感染症の原因の約65％をカバーすると言われております。インフルエンザにかかると肺炎を併発しやすいのですが、インフルエンザワクチンに加え、このワクチンを接種すると入院リスクは63％軽減し、死亡リスクは81％軽減するという報告があります。またPCV13（プレベナー13）に関してはオランダでの大規模な試験（CAPiTA試験）で、侵襲性肺炎球菌感染症の予防効果と共に、高齢者での肺炎球菌による肺炎の減少が報告されています。

定期接種のPPV23（ニューモバックスNP）は対象年齢（65歳）に達した場合は行政の制度に従い積極的に接種を受けることが推奨されます。PPV23（ニューモバックスNP）は1回の接種で約5年効果が持続しますが再接種により予防効果の継続が期待されます。任意接種のPCV13（プレベナー13）とPCV15（バクニュバンス）は全年齢で、「肺炎球菌による罹患リスクが高いと考えられる者」に該当する方で医師が必要と判断した場合は接種が可能です。PCV13（プレベナー13）とPCV15（バクニュバンス）は、抗体産生だけではなく免疫記憶を誘導する作用があり、予防効果が長期間持続するため、PPV23（ニューモバックスNP）と併用することが望ましいと考えられます。現在このPCV13（プレベナー13）とPCV15（バクニュバンス）は補助の対象にはなっておりません。

米国の予防接種諮問委員会（ACIP）は65歳以上の高齢者に対してPCV13（プレベナー13）またはPCV15（バクニュバンス）の接種を行い、1年以上経過した後にPPV23（ニューモバックスNP）の接種をすることを推奨しています。またPPV23（ニューモバックスNP）を既に接種している65歳以上の高齢者には1年以上経過した後にPCV13（プレベナー13）またはPCV15（バクニュバンス）を接種することが推奨されています。このことは日本感染症学会と日本呼吸器学会の合同委員会の肺炎球菌ワクチン接種の考え方にも反映されています。

23価肺炎球菌ワクチン（ニューモバックスNP）の接種受託医療機関

令和6年4月1日現在