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住民検診においてHelicobacter pylori検査はどのように活用されるか?−血清H.pylori抗体価、血清ペプシノゲン値同時測定による胃がん検診(ABC検診)の試み−

ペプシノゲン法による地域住民胃がん検診−「高崎市方式」10年間の検討−

ペプシノゲン法による胃がん検診 ABC検診(胃がんリスク検診)
 




要旨・緒言 対象と方法 結果 考察 結語・文献

【考察】
進展した慢性萎縮性胃炎が胃がん発生に深く関わっていることは広く支持されている1)2)。したがって慢性萎縮性胃炎である個体は胃がん高危険群に属すると考えられている。この胃がん危険群を簡便にしかも安価に抽出できるのがPG法3)である。我々のような地域検診では様々な年代,職業,生活習慣をもつ市民が対象である。この不特定多数の対象の中から胃がん高危険群を抽出し内視鏡による精密検査を行うことは地域検診にこそPG法が非常にすぐれたスクリーニング方法であると考えられる。

1)PG法による胃がん検診の成績は,発見率でX線と同等かそれ以上,発見者数で2.7倍となり早期胃がん発見率も高かった。

2)PG法は固定化,低迷化しているX線法の受診者以外の新規受診者の掘り起こしにに有用であった。

3)大腸がん検診とセットにしたPG法は他項目,個別検診化に添うもので両者の成績向上に寄与した。

4)費用効率の面からもPG法は極めて有用で,がん1例の発見費用はX線法の1/2以下であった。 以上の我々の結果からもPG法は地域検診の一次スクリーニング検査となりえると考えられた。 しかしながら十数%存在するといわれるPG法陰性胃がん症例4)をどうするか,特にPG陰性進行がんの見落としをどうするかが問題となってくる。そこで我々の3年間の成績とPG法の利点,従来のX線法の利点等考慮し今後の胃がん検診のあり方を検診の原点(より多くの人に,より安全に,より精確に,より安いコストで)に戻って考えてみると表6のような結果(試案)となった。以下項目ごとに考察を加える。

表6:新しい胃がん検診のあり方(試案)

1, 胃がん検診は2段階方式とし、第一次スクリーニングにはPG法を用い,受診率の向上およびコストの削減をはかる。
2, PG法陽性者は内視鏡検査にまわし,陰性者に対してX線法(間接法を主体とする)を行う。
3, 第二次スクリーニング(X線法)検査は進行胃がんの見落としを防ぐ目的であり,従来の方式を再検討(バリウム濃度,撮影枚数,撮影体位等々)し,要請検率を数%以下に抑える。(発想の転換)
4, 有症状者は検診の対象から除く。(診療と検診の分離)
5, PG法は新規受診者の掘り起こし,精検勧奨の観点から逐年検診を原則とする。
6, 70才以上の高齢者はPG法のみとし,X線法を省く。

1.は前述したとおりPG法は不特定多数の市民を対象とする地域住民胃がん検診のすぐれたスクリーニング検査であり,さらに簡便性,低コストであることから,一次スクリーニングに従来のX線法ではなくPG法を用い,受診率の向上およびコストの削減をはかるということである。

2.はPG法陰性者に対する2次スクリーニングのX線法は間接法を主体にするということであるが,根拠は2点あり,1つはここ数年の全国集計の成績5)から直接法より間接法の方が精度が高いこと,2点目はコストの問題である。

3.2次スクリーニングの間接法は,思い切った発想の転換を行い,間接法の進行がんの示現率がほぼ100%に近い6)という成績からPG法陰性者の進行がんを見落とさない目的で施行し,間接法の感度だけでなく,特異度についても一層向上させるべく従来方式を再検討し,間接法による要精検率を数%以下に抑え,全体の要精検率を高くしない工夫が必要と思われる。

4.がん検診に限らず検診一般にいえることであるが,21世紀の検診は原点に戻って有症状者を対象とする「診療」と分離しなければならない。なかんずく現在各地で行われている直接X線法による胃がん検診の個別検診7)では,かなりの有症状者がその対象になっていることは周知の事実である。「検診」の対象から有症状者を除外することでPG法の弱点である低分化型,陥凹型胃がんの多くは「診療」の場から拾い出される可能性が大きいと考えられる。

5.PG値によるスクリーニングは3〜5年に一回でよいというデータがあり8),それは正しいのであるが,不特定多数の市民を対象とする地域検診の現場から考えると次の3点から逐年検診のほうが応用しやすいと考えている。第一点は,精検勧奨の観点からである。PG法は胃がん検診を受けたという意識がうすく,精検受診率がX線法に較べ低いのが実状である。毎年受診させ去年も今年も陽性なのだから今年は精検を受けましょう,という精検勧奨はかなり有効と思われる。

第二点は,住民は基本健診でほぼ毎年採血を受け,その一部を利用するわけであるから,受診者に負担はなく,PG測定そのものが数百円で行える環境から考えて,毎年コレステロールを測定するのと同じ感覚でよいのではないか,そしてそれが新規受診者の堀りおこしにつながれば,検診方法としては最上と思われる。第三点としては,今後検診の主体が自治体に移った場合,行政の仕事としては一律の方が,事務が簡素化され,やりやすい面があろうと思われるからである。

6.高齢者の検診をどう考えるかは難しいところであるが次の4点からX線法を省くという結論になった。第一点は要精検率の問題である。70歳以上のPG法陽性率36.1%であった9)。これにX線法を併用すれば更に精検率が上がってしまい検診としての意味がうすれてしまう危険がある。第二点は,高齢者胃がんは分化型が多く,PG法のみで充分ではないかと考える。第三点はX線法による不利益を考慮した。
すなわち体位変換やバリウムによる便秘等々X線法は高齢者にかなりの負担になっていることも事実である。第四点はコスト・ベネフィットの観点である。生産年齢と高齢者をある程度分けて考えることも今後の胃がん検診には必要ではないかと考えている。当然症状のある人は自由に「診療」を受けられるわけであるからあまり問題はないかと考えている。 さらに追加をすれば,今後の胃がん検診のあり方については以下の点を考慮すべきと考えた。

1)地域住民検診と職域検診・人間ドッグを分けてその方法を考える。
2)Heilcobacter pylori感染の有無を考慮して高危険群と低危険群を設定する。
3)胃がん検診を含むがん検診が各自治体の主体性にまかされた現在,画一的でない幾通りかの方法を明示し今後の検証につとめる。
4)PG法陰性胃がんの解析(自覚症状の有無等)を大規模に行い今後の対策に備える。



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